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名古屋地方裁判所 昭和41年(ワ)2626号 判決

主文

被告から原告に対する名古屋地方裁判所昭和二三年(ワ)第二二四号建物収去土地明渡請求事件の和解調書(第六項)に基づく強制執行はこれを許さない。

訴訟費用は被告の負担とする。

本件につき、当裁判所が昭和四一年一〇月一日なした強制執行停止決定はこれを認可する。

前項に限り仮に執行することができる。

事実

原告訴訟代理人は、主文第一、二項同旨の判決を求め、その請求の原因として、

(一)被告から原告に対する債務名義として、名古屋地方裁判所昭和二三年(ワ)第二二四号建物収去土地明渡請求事件の和解調書が存在する。

(二)右和解調書によると、被告は、原告に対し別紙目録および別紙図面記載の土地を昭和二一年一月一日から二〇年間(すなわち昭和四〇年一二月三一日まで。)賃貸し、期限到来と同時に明渡しをなすことなる旨の記載(右調書第六項)がある。

(三)しかしながら、右昭和四〇年一二月三一日の期限到来に際し、原告は本件地上に建物を所有していたので、被告に対し右賃貸借の更新を請求し、かつ、右期限経過後も従前通り建物を所有して本件土地の使用を継続したのであるが、被告はこれに対し何ら異議を述べなかつた。

(四)よつて、本件賃貸借契約は更新せられ、前記和解調書に基づく原告の本件土地明渡義務は消滅するにいたつたから、同調書の執行力の排除を求めるものである。

と陳述した。

立証(省略)

被告訴訟代理人は、原告の請求を棄却する、訴訟費用は原告の負担とする、との判決を求め、答弁として、

(一)請求原因(一)、(二)の事実、(三)のうち原告が現に本件地上に建物を所有していることは認めるが、その余の事実は否認する。

(四)は争う。

(二)被告は、本件和解調書に定められた本件土地明渡期限にその明渡しを受けるべく、昭和四〇年三月一五日から再三に亘り期限に間違なく義務を履行するよう原告に請求し来つたが、これに対する原告の態度は明確でなかつた。そこで、被告は万一を慮り、同年一一月一二日本件和解調書に執行文の付与を受けていたものであり、原告において更新請求をしたことはない。

(三)原告は、本件賃貸借の期間についても借地法による更新があり得るかのごとく主張しているけれども、和解条項は一般私人間の契約と異なり、制度として行われているもので、その内容の決定については実質的正義の立場からなされる合理的裁量が加わつているものであり、和解条項の趣旨に従つた効力を認めなければ法的安定は根本から覆えされてしまうのである。いわんや、本件和解は建物収去土地明渡請求訴訟において当事者双方の弁護士および裁判官立会いのうえで成立したもので、いわばこれにより、当事者を拘束する具体的規範が設定されたわけであるから、更新に関する借地法の規定の適用は排除されたものというべきである。

と陳述した。

立証(省略)

別紙

目録

名古屋市中区富沢町三丁目一三番

宅地    参壱五坪弐六(一、〇四二・一八平方米)

右土地に対する仮換地

中一工区二九Aブロツク七番

宅地    壱四五坪弐七(四八〇・二三平方米)

のうち別紙図面記載甲の部分

壱〇弐坪六弐(三四二・五四平方米)

名古屋市中区富沢町参丁目拾参番

仮使用指定地  分割測量図 縮尺弐百分ノ壱

実測坪数

甲、壱百弐坪六合弐勺

乙、四拾弐坪六合五勺

〈省略〉

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